−東京ディズニーランド レイジングスピリッツの事故− |
平成24年5月28日、東京ディズニーシー「レイジングスピリッツ」において、男性の乗客が通路に飛び降りて負傷するという事故が発生した。この事故の原因および再発防止対策が、6月4日に(株)オリエンタルランドから出された。 |
(株)オリエンタルランドから出された「東京ディズニーシー『レイジングスピリッツ』における事故原因および再発防止対策について」は、こちらをご覧ください。 |
「この東京ディズニーシー『レイジングスピリッツ』における事故原因および再発防止対策について」を見てみると、たくさんの疑問点と問題点が見えてくる。そして、原因の究明もお粗末であり、再発防止対策も再発防止になっていない。つまりいつかまた同種の事故が起きるおそれがあると思えてならない。そこで、以下の通り検証してみた。 |
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1.事故の概要 |
報道記事などを基に事故の内容を整理すると事故の概要は以下のようになる。 |
1)『レイジングスピリッツ』の出発前に、男性乗客の安全バーは下がっていた |
2)『レイジングスピリッツ』が出発した後で、スタッフが無人席の安全バーが上がったままであることに気づき、「緊急停止ボタン」を押して、停止させ、ロックを解除した |
3)男性乗客の安全バーが上がってしまう |
4)スタッフが無人席の安全バーを下げた |
5)スタッフは男性乗客の安全バーが上がったままであることに気付かず、「『レイジングスピリッツを出発させた』 |
6)男性乗客の安全バーが上がったまま『レイジングスピリッツ』が動き出し、危険を感じた男性乗客が出発直後に飛び降りようとした |
7)この状況を見たスタッフが「緊急停止ボタン」を押して、『レイジングスピリッツ』を停止させた |
8)その後、『レイジングスピリッツ』は再び動き出した |
9)男性乗客が『レイジングスピリッツ』から飛び降りた |
10)スタッフは再度「緊急停止ボタン」を押した |
11)『レイジングスピリッツ』は2メートル動いたところで停止した |
12)男性乗客は転倒し、全治2週間の怪我を負った |
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2.事故原因および再発防止対策 |
平成24年6月4日、(株)オリエンタルランドは、「東京ディズニーシー『レイジングスピリッツ』における事故原因および再発防止対策について」を公表した。この報告書にによると、千葉県県土整備部都市整備局建築指導課にも報告したと記述されている。この報告書によると、事故原因および再発防止対策は以下のとおりである。 |
1)事故の原因 |
@安全バーを上げたまま『レイジングスピリッツ』を出発させた |
A安全バーの仕組みに関する教育が徹底できていなかったため、スタッフが状況を誤って認識した |
2)再発防止対策 |
@『レイジングスピリッツ』の運営に関わるすべてのスタッフに対して、「『レイジンブスピリッツ特有の安全バーのロックや解除の仕組み』について知識教育と実地教育を行う」 |
A一時停止動作に安全バーが下げられない座席があった場合にはすべての乗客に降車していただくようにマニュアルの見直し・変更を行う |
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3.問題点 |
1)平成24年6月4日、(株)オリエンタルランドから発表された報告書は極めてわかり難い。この報告書に基づいて千葉県県土整備部都市整備局建築指導課にも報告されたというが、理解できたのであろうか。極めて疑わしい。 |
2)『レイジングスピリッツ』は360度ループする乗り物であり、安全バーで乗客の身体を固定しなければならないのに関わらず、この安全バーが上がったまま『レイジングスピリッツ』が出発できるようになっていることが根本的な問題である。安全バーが一つでも上がったままであったら出発できないようにすべきである。これが、真の再発防止対策である。 |
3)男性乗客の安全バーが上がったまま『レイジングスピリッツ』が動き出し、危険を感じた男性乗客が出発直後に飛び降りようとしたのを見て、スタッフが「緊急停止ボタン」を押して、『レイジングスピリッツ』を停止させたが、その後突然動き出した原因について報告書では何も述べていない。 |
また、報道によると、「緊急停止ボタン」を押して、『レイジングスピリッツ』を停止させた後、『レイジングスピリッツ』が突然動き出した原因は、操作ミスとしているが、どのような誤りなのかは明らかでない。 |
4)報告書には、「『レイジングスピリッツ』の安全バーについて」以下のような特徴があると記述している。 |
@【出発操作前に一時停止操作が行われた状態】 |
安全バーを下げることができる |
A【出発操作後の一時停止状態】 |
安全バーを下げることはできない |
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しかし、こんなわかり難い仕様があるだろうか。「一時停止」は一つしかないものであって、出発操作前と出発操作後で、意味が異なることが間違いの基である。 |
わかり難い仕様を教育で補おうという考え方が根本的に間違いである。 |
5)”【出発操作後の一時停止状態】のとき、安全バーを下げることはできない”という仕様は、根本的に間違っている。 |
本来は、「安全バーを上げることはできないが、下げることはできる」とすべきである。こういった間違った仕様があるものだから、安全バーが上がった状態で出発させてしまって、緊急停止しても上がった状態の安全バーを下げることはできず、今回のような事故が発生するのである。また、スタッフを混乱させ、ミスを誘発させた原因はここにある。 |
6)さらに、同報告書には「このたびの事故は、このタイミングで生じた”安全バーが下がらない状況”に対し、 |
”安全バーが下がらない状況”=”乗り物は出発操作後の一時停止状態にある” |
ということを理解していれば防ぐことができました。 |
と記述されている |
しかし、「一時停止状態」に二種類あることが分かりにくい上に、その違いを認識させようとすることが問題であり、スタッフに混乱を招いた原因である。 |
7)そういった根本的に安全性の欠如した『レイジングスピリッツ』の安全性に対して、安全性の改善をしないままでは、真の再発防止対策とは言えない。その本質的な欠陥をスタッフの教育やマニュアルで対応しようとしても継続は困難である。再発防止対策は継続して実施されるものでなければならない。 |
教育やマニュアルは最も継続させることが困難である。特に、スタッフ(人)には出入りがあり、ベテランのスタッフが当たり前と思ったことが新人のスタッフには伝わらない。 |
したがって、忘れたころにまた同じような事故が繰り返されるおそれがある。 |
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