品質管理とは
品質管理の講義で使用している教材
なぜ、事故は繰り返されるのか(その1)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その2)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その3)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その4)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その5)
なぜ、18年間無事故だったのか
なぜ、事故は繰り返されるのか(その7)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その8)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その9)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その10)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その11)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その12)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その13
なぜ、事故は繰り返されるのか(その14)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その15)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その16)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その17)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その18)
なぜ、事故は繰り返されるのか(その19)
参考文献
−東海道・山陽新幹線「のぞみ34号」の台車に亀裂発生−
1.不祥事の概要
 1)2017年12月11日午後5時頃、博多発東京行きのぞみ34号に異音や焦げた臭いが発生したため、名古屋駅で運転を中止して床下を点検したところ、鉄製台車枠の車両を固定する部分1か所に長さ140mmの亀裂が見つかった。
 2)断面が高さ170mm、幅160mm、板厚8mmの箱型(「ロ」の字型)の構造となっている「側バリ」といわれるところである。
 3)台車枠の製造過程で底部を不正に削り、鋼材の板厚が最も薄くなっている箇所では基準の7mmを下回る4.7mmとなっており、溶接不良もあった。
 4)基準を下回る台車はJR西日本とJR東海で合計146台あると発表された。
2.側バリの構造
 1)側バリは、断面が「コ」の字型のプレス品を2個用意して、突き出た部分同士を合せて「ロ」の字型の断面となるように抱き合わせることで本体を組み立てる。
 2)その後、鍛造部品の「軸バネ座」や板材部品の「フタ」、プレス部品の「補強」を側バリ本体に溶接して取り付けることで側バリが出来上がる。
3.発生のメカニズム
 1)車体を支える役割を果たす「側バリ」の上下には凸部があるため、軸バネ座を固定する際には、がたつきが発生しないように、その隙間を0.5mm以下とするように定められているが、川崎重工では、本来行ってはいけない側バリの凸部を削り、肉盛溶接により隙間を調節、固定していたという。
 2)その結果、側バリの板厚を8mm(加工後は7mm以上)とする設計基準が守られず、最小で4.7mmになる箇所が発生した。亀裂は板厚が薄くなった側バリ下面と軸バネ座の結合部から広がり、応力が増していくにつれて金属疲労が進み、発生したと推定される。
4.原因
 1)台車枠の鋼材は製造の際、削る工程を原則禁止とする決まりがあったが、同工場の班長が作業員40人に徹底させていなかった。作業員は軸バネ座をしっかり取り付けようとして削ってしまいそのまま出荷していた。
 2)側バリ本体と軸バネ座との隙間を0.5mm以下で管理していたが、外注品のプレス品の曲げ加工精度にばらつきがあった。そのため、側バリ本体において、軸バネ座を取り付ける部分(側バリの下面)の平面度が悪いケースがあり、調整作業が必要であった。この調整作業で側バリ本体の下面を研削していた。
5.事故の背景
 1)作業手順が現場任せとなっていたこと、社内規定が守られないなど、ずさんな品質管理体制が背景にあた。
 2)問題となった台車枠の鋼材の厚さについては、社内の検査項目などに含まれておらず、出荷まで確認されることがなかった。
 3)製造作業における重要事項などを作業者に伝える「作業指示票」には、調整作業において側バリ本体を削ることを禁止する規定があった。しかし、班長は「溶接ビード近接の母材は0.5mmまで削ってよい」と判断し、社内の「組立溶接作業基準」の溶接部位の仕上げ基準を拡大解釈し、この部分の調整作業に適用していた。
 4)さらに、作業者には側バリ本体と軸バネ座の間をガタつかないように調整するように指示しただけで、0.5mmを超えて側バリを削ってはいけないという指示を出していなかった。
6.対応措置
 1)超音波検査の結果、強度には問題ないとして運行を続けながら順次交換する。
7.問題点
 1)「従業員員は軸バネ座をしっかり取り付けようとして削ってしまった」とあるが、底部を平らにする必要があったのか。平らにしないと軸バネ座に取り付けられないとしたら、そもそも設計不良ではないのか。
 2)「外注品のプレス品の曲げ加工精度にばらつきがあった」ことも要因としてあるようだが、外注品の受入検査および外注先の品質管理が行われていなかったのではないか。
 3)平らにしなくても(削らなくても)軸バネ座に固定できるのかどうか。
 4)平らにしないと、軸バネ座への固定に支障をきたすということは構造的に問題があるということではないのか。
 5)他の新幹線車両はどうなっているのだろうか。
6.参考文献
 1)「新幹線の台車に亀裂=初の重大インシデント認定−運転中止「のぞみ」」(時事ドットコムニュース 2017.12.12 23:34)
 2)「のぞみ台車亀裂「破断寸前」JR西、脱線招く恐れも」(朝日新聞 2017.12.19 20:21)
 3)「川崎重工、台車146台交換へ、JR西・東海」(毎日新聞 2018.2.28 21:31 最終更新2018.2.28 22:43)
 4)「ずさんな品質管理、背景に作業手順、現場任せ−川崎重のぞみ台車亀裂」(時事ドットコムニュース 2018.2.28 22:36)
 5)「川崎重、ずさんな品質管理体制・・・新幹線亀裂」(読売新聞 2018.3.1 7:26)
 6)「『のぞみ』台車亀裂の調査経過を公表・・・台車枠「側バリ」の溶接箇所が問題と指摘」(レスポンスResuponse.jp 2018.3.1 19:14)
 7)「のぞみ台車亀裂問題、川重が図面指示よりも薄く研削」(日本経済新聞 2018.3.2 20:00)