−ANA140便の事故は典型的なヒューマンエラー− |
1.事故の概要 |
2011年9月6日午後10時50分頃、那覇空港発羽田行きANA140便(ボーイング737-700)が浜松市南方43キロ、1万2500メートル上空で、機体が1800メートル急降下して、左に130度傾きほとんど裏返しとなる事態となった。 |
この事故で、客室乗務員の女性2名が軽傷を負ったが、乗客には怪我人はいなかった。 |
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2.原因 |
1)機長(64)がトイレから戻って、コックピットのドアを開けるためには、ドアロックを開錠してもらう必要があり、副操縦士(38)が、図1に示す「開錠スイッチ」を操作すべきところ、誤って「かじの操作スイッチ(方向舵調整スイッチ)」を左に操作してしまった(ヒューマンエラー)。 |
2)「開錠スイッチ」は副操縦士の席からは、奥の方にあり「方向舵調整スイッチ」と勘違いしたものとみられる(副操縦士席からは左側にあり、操作しにくい)。 |
3)飛行経験、機長は1万6500時間、副操縦士は2400時間ということのようである。コックピットのドアを開錠するようなケースはそんなにないのかもしれない。 |
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図1.コックピット内のスイッチ配置のイメージ |
(注)「livedoor版:背面飛行したボーイング737-700型のコックピットl(2011年12月5日)」から引用 |
3.教訓 |
1)コクピットのスイッチ配置は概略図1に示すようになっており、「方向舵調整スイッチ」がほぼ中央にあり、「開錠スイッチ」と隣接していて、10数センチしか離れていない。しかも、いずれもつまみを回すタイプで、形状も似かよったものらしい。おそらくこういったことは副操縦士も認識していたであろう。 |
2)「開錠スイッチ」は左に回すとドアが開錠される。「方向舵調整スイッチ」を左に回すと機体が左に傾く仕組みになっている。人間はうっかりミスを起こしやすいことを考えるとヒューマンエラーが起こしやすい配置となっている。 |
3)「方向舵調整スイッチ」を操作すると機体のバランスを崩すことになり、墜落事故につながるおそれがあるので、カバーを付けるなどのヒューマンエラー防止対策が必要である。 |
今回の事故は、操作ミスとして処置されているそうであるが、いつかまた同種の事故が発生する恐れがある。人間のミスを起こさせないようにする仕組みが必要ではないだろうか。 |
そうしないと真の再発防止対策にはならない。 |
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4.再発防止対策 |
「方向舵調整スイッチ」にカバーをつけることが再発防止対策です。そうすれば、誤って操作してしまうことがなくなるでしょう。こういったヒューマンエラーを防止するために教育訓練が一般的ですが、これでは再発防止にはならない。操作パネルの電源ボタンにカバーを付けることが多いですがこれと同じです。 |
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